読み解かせる漫画「Death Note」


この衝撃は、いつ以来だろう。


学生時代以来ひさびさに漫画を読んで、完全に打ち抜かれた。本当に面白かった。

いまどきの漫画はどれもこんなに面白いのかな? 最近の他の漫画をほとんど読んでないので分からなかったのだけど、小飼弾さんの書評を見ても、どうやらこの作品が特別らしいことが分かる。


つのる思いもあるだろうが、まずは読んでいただきたい。子供には刺激が強すぎる?それは最後まで読んでないからです。最後まで読めば、子供にこそ読ませるべきだという話だというのがわかります。これからは本作品が、文学としての漫画の教養の一つになることは確実だと思われます。

「文学としての漫画」僕も同じようなことを思った。作品の世界観やそれが暗喩・換喩するものについてなど、感想はいろいろあるけれど、長くなるのでその表現手法についてだけ。


僕に文学のなんたるかが語れるはずもない。でも直感的に、この漫画がしようとしていることは、推理小説というジャンルにとって脅威になるのではないかと思う。

この作品の最大の特徴は、文字と絵のバランス、すなわち論理性と感覚性のバランスが絶妙、ということだと思う。文章による叙述が、ノートを中心にキラ側・エル側それぞれで推論する論理の網を、きわめて正確に表現している。同時に、絵による描写が、心理の変化や時間の推移といった物語世界そのものを、確実に感受させてくれる。

全脳がフル回転なのだ。

そういう意味で、僕にとって全体を通しての圧巻は、やはり第7巻冒頭のヘリ中の例の場面。小説という文章だけの技法では、あの表情と、そこからの一瞬でのフラッシュバック、結果としてあの長い長い伏線の実現は不可能だろう。時間を瞬時にもどして読者に何の違和感ももたらさない「絵」という手法は、やはりすさまじい。その場面転換のうえで文章によるトリックの説明が丁寧になされると、全体がすっと腑に落ちる。


これまでの(僕の知ってる限りでの)推理小説的漫画は、絵と文章の比がどうしても前者に偏っていたのではないだろうか。 Death Note のアプローチで新しい作品が続けば、「読み解かせる漫画」が漫画の中の一大ジャンルとして確立するのではないか。

で、今ふと思うと、これのはしりは名作ゴルゴ13だったと後世に言われたりして。

ちなみに僕がこの漫画を読んだのは、以前の弾さんのエントリーがきっかけだった。感謝しつつトラックバック